【視点】駐屯地開設 安全守る画期的一歩

 陸上自衛隊石垣駐屯地が16日発足した。八重山の島々と住民の安心安全を守る上で画期的な一歩であり、八重山住民として高く評価する。沖縄・八重山を取り巻く国際情勢の緊迫化を考えると、ここに至る歩みは遅すぎたほどだった。
 台湾に近い国境の島である与那国島では、かつて県警の駐在員がいるだけで、他国からの侵入者やテロに対応できる状況では到底なかった。
 そうした状況が戦後70年放置された。国境に対する日本の防衛意識は、それほど薄かった。
 現在では与那国島に陸自の沿岸監視隊が配備され、今後は実力部隊が追加派遣される計画もある。「国が責任を持って離島住民を守る」という当然の責務に政府が気づいたのは、つい最近のことなのである。
 尖閣諸島を抱える石垣市も「国境のまち」だ。尖閣諸島を抱えながら、これまで確固とした守りの体制が築かれていなかった。石垣市への陸自配備の打診があったのは2015年で、もう8年近く経過している。
 この間、中国は軍事力を急速に拡大し、尖閣諸島周辺での領海侵入を常態化させ、沖縄周辺の太平洋上で空母を使った戦闘機の訓練を展開。台湾だけでなく沖縄・八重山にも公然と軍事力による威嚇を加えている。
 「台湾有事」が目下の最大関心事になっているが、中国は尖閣諸島を「台湾に付属する島々」と定義している。習近平国家主席が「台湾統一」を声高に叫ぶ時、その「台湾」には尖閣諸島、すなわち八重山も含まれている。台湾有事は日本有事どころか、沖縄有事、八重山有事だと考えるべきだ。
 陸自配備に反対する人たちは「自衛隊がいると狙われる」と主張してきた。最近では政府が反撃能力保有を打ち出したことから「長射程ミサイルが配備されると狙われる」とアピールしている。
 中国が台湾に侵攻するなら、日米同盟との対決は当然覚悟しているはずだし、台湾や尖閣の周辺にある八重山の有人島も最初から標的になっているだろう。自衛隊がおらず、長射程ミサイルがないからといって、八重山の安全がより向上するわけではない。
 八重山の地理的条件を考えれば「何々があると狙われる」といった議論は事実上無意味で、この種の議論を一番面白がって眺めているのが中国だろう。
 石垣市には約570人の自衛隊員と家族が転入する。島に危機が迫れば、身を挺して対処する人たちだ。八重山住民として、隊員たちに最大限の敬意を持ち、温かく迎えたい。
 市教育委員会によると、小学生32人が市内の学校に転入する。地元の子どもたちと友情を育み、将来の八重山ファンとして成長してもらえるようにしたい。
 自衛隊隊員や家族にも、八重山の豊かな自然や伝統文化に対する理解を深めてもらいたい。国境に連なるこの島々を守ることは、日本という国そのものを守ることでもある。強い使命感を持ち、この島での任務に励んでほしい。

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