与那国町新川鼻の洞窟で10日、1人が死亡、2人が一時行方不明になった洞窟探検ツアーは、町有地の洞窟を無断で使用していたことが13日、八重山日報の取材で分かった。与那国町と、ツアーを実施したアクトプロ(東京)は無断使用を認めている。死亡した男性の死因は溺死と分かり、八重山署はアクトプロの安全管理に不備がなかったか、業務上過失致死容疑での立件を視野に事故の全容解明を急ぐ。
事故が起きた洞窟について、事故当時、アクトプロの広報担当者は「地権者の快諾を得て、ツアーを実施していると聞いている」と説明していたが、13日、町有地の無断使用を認めたうえで「自社による独占使用や建物の建設などは行っていない」と、町有地の探検ツアー使用に法的な問題はないとの認識を示した。
町の担当者は同日、「使用許可は出していないし、アクトプロから使用料などは受け取っていない。今後対応を協議する」と無断使用されていたことを認めた。
事故では名古屋市の伊東秀恭さん(41)が死亡し、伊東さんの妻(52)と男性ガイドが一時行方不明になった。捜査関係者によると、3人は探検ツアーの終盤に出入り口へ戻る途中、1人の携帯電話が流され、探しに行って離ればなれになったところで急に水位が高まったと証言しているという。伊東さんの死因は解剖の結果、溺死だった。
3人は10日午前10時ごろ、洞窟探検ツアーに出発。この時点ですでに洞窟内には水がたまっていたことも捜査関係者への取材で分かった。アクトプロの広報担当者は「普段から水がたまっていて、異常なことではない」としているが、雨が降った場合に、水位がどのぐらい上昇するか、地下水の流れがどう変化するのかを熟知していたかを含め、ツアーを決行した判断が妥当だったかは、今後の捜査の焦点となりそうだ。
与那国島上空は10日、気圧の谷になり、前日に続いて未明から断続的に雨が降り、午前11時までの1時間に21・5ミリ、正午までの1時間に14・5ミリの雨が降っていた。
アクトプロ広報担当者によると、洞窟探検ツアーを開始した昨年11月以降、3人のガイドが交代でツアーを引率し、これまでに100人以上のツアー客が利用したという。ツアー料金は1人1万2000円だった。
アクトプロは、町内にコールセンターや飲食店を開設し、複数の事業を展開していたが、洞窟探検ツアーについては「御嶽のような聖域であり、町民は近寄らない。観光客が洞窟の中に踏み込んでいくが、いかがなものか」といった不安や疑問視する声が広がっていた。譜久嶺弘幸副町長は「亡くなられた方には気の毒だが、今回の事故は町の観光産業全体に暗い影を落とす」と懸念した。