竹富町小浜島で先日開かれた結婚式。なんと30年ぶりに、新郎新婦とも島出身者だという。同町では夫婦の双方、あるいは片方が移住者であるケースが多く、両親とも島出身者という子どもは、むしろ少数派になりつつあると聞く。小さな島であればあるほど、移住者のウエイトが大きくなりつつある◆移住者同士から生まれた子どもも、れっきとした島民だが、そのルーツは島ではなく東京や大阪などにある。こうした傾向は八重山全体で進んでいるように感じられ、もう「島民」の判断基準はDNAではなくなっている◆八重山は昔から移住者を積極的に受け入れてきた土地柄で「合衆国」と呼ばれることもある。出自を気にしない寛容さがあるのだ。多分に差別的な「ナイチャー」(本土出身者)や「裏石垣」(市街地以外)という言葉も、昔はよく耳にしたが、最近は表立って使われることはない。いずれ八重山の「純血種」が消えていくのも時の流れだろう◆だが気になることもある。島の伝統文化の継承に熱心なのは、島民よりも本土の人であることが多い。今や「とぅばらーま」を歌うのがナイチャーで、聞き惚れるのが島民であることもしばしばだ◆島の精神は島の人間が受け継ぐ。移住者が増えても、その原点は見失ってほしくない。