【視点】徳勝龍初V「古き良き時代」の大相撲

 優勝インタビューを見て、涙腺がゆるんだ視聴者も多かったかも知れない。初優勝を決めた瞬間、感極まって顔をくしゃくしゃにした姿には、思わずもらい泣きしてしまいそうな実感がこもっていた。
 大相撲初場所で、徳勝龍が幕尻優勝を飾った。番付最下位の力士が果たした20年ぶりの快挙を「下剋上」と報じたメディアもあった。33歳5カ月の初優勝は歴代3番目の遅さ、日本出身力士としては最年長という。
 徳勝龍の初優勝には、日本人好みのドラマが数多く詰まっている。
 十両や平幕下位が長く、ほとんど目立たない力士だった。同じ年齢には引退した横綱・稀勢の里や、奇しくも同じ初場所で引退を決めた大関・豪栄道がいる・出世争いでは同期に大きく先を越され、スポットライトを浴びる機会にも恵まれなかったが、一度の休場もなく、黙々と相撲を取り続けてきた。

 現代は、株の売買で巨万の富を築いた起業家などが、メディアで「勝ち組」のようにもてはやされる時代だ。持てる者と持たざる者の格差は開く一方で、一攫(かく)千金のサクセスストーリーだけに注目が集まる。
 そんな中、徳勝龍の賜杯は、額に汗して地道に働く大切さ、こつこつ努力すれば必ず報われるという希望を、日本人に改めて思い起こさせてくれたようだった。
 場所中に、大学時代の恩師が死去したことも初優勝をさらに劇的にした。優勝インタビューで「一緒に土俵で戦ってくれてたんやな」と恩師をしのび、視聴者の涙を誘った。
 同じインタビューでは「自分なんかが優勝していいんでしょうか」「(優勝は)めっちゃ意識してました」と茶目っ気たっぷりに語り、笑いも織り交ぜて見せた。
 優勝の常連である横綱・白鵬の場合は、優勝インタビュー中、観客に万歳三唱や三本締めを要求して相撲協会から注意されるなど、傍若無人な振る舞いが目立った。それだけに徳勝龍の実直な物言いは、視聴者に好感を持たれたはずだ。

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