■前川氏と渡り合いたかった… 「面・柔・腹・拝」足りなかった私
高名な前川喜平氏のことは私も前から存じ上げていた。しかし、その歯に衣着せぬ物言いに、常々ある種の疑問も抱いていた。というのも、いわゆる「モリカケ問題」に関する野党や一部マスコミの報道が次のようなものだったからだ。
〝安倍首相と当事者が友人「だから」、何か便宜があった「はず」だ〟と憶測を叫ぶ。しかしいつまでたっても証拠が挙げられない。あったのは「モリ」では、森友学園を巡る補助金詐取事件の籠池泰典被告の証言、「カケ」では前川氏の証言ぐらいだった。
そこで追及する側にある挙証責任を棚に上げ、客観的な証拠を示さないまま、〝「疑惑」は深まった〟と煽(あお)り続けた。
しかも、「カケ」に関しては、国会で加戸守行・元愛媛県知事が「歪められた行政が正された」、つまり、文科省が勝手に定めた「告示」により52年間も大学の獣医学部新設が許されなかったという「岩盤規制」が破られたのだ、と証言した。
にも関わらず、マスコミは「行政が歪められた」と断言して譲らなかった前川氏の発言ばかりを取り上げていたのだ。前川氏がそれを良しとしたことを、私は疑問に感じた。
しかし講演会で見方が変わった。
第1次安倍政権時代に国家公務員法改正を企画立案し、天下り斡旋禁止を推進した元財務官僚の髙橋洋一嘉悦大学教授は「モリカケ」についてこう述べる。
「天下りは身内の役人という既得権に甘く、それ以外の人は雇用を奪われる。新規参入の許認可も、既に参入している既得権者にとって有利で、新規参入者を不当に差別する。こうした意味で、天下り斡旋を行うことは、新規参入阻止と整合的である」(『マスコミと官僚の小ウソが日本を滅ぼす』)―。