新型コロナウイルスの感染拡大で観光客の減った石垣島にここ数日、卒業旅行の大学生を中心に客足が一定程度戻ってきた。当初は海外など他の旅行先を検討していたが、感染者増で敬遠し、国内で感染圏から離れる石垣島に行き先を急きょ変更した旅行者も少なくない。観光への打撃で悲鳴を上げていた地元観光業者は一筋の光明に期待感を抱いている。
「バリ島に行く計画だったが、感染拡大で1週間前に旅行先を石垣島に変えた」
島内一の観光名所、川平湾。卒業旅行で大阪府から友人と2人で来た大学生金山紗弓さん(23)は旅先変更の理由を話す。飛行経由地のフィリピンが入国制限を打ち出したことが決め手になったという。行程は3泊4日で石垣島に2泊、残り1泊を小浜島で過ごす。
グラスボート業者は「20、21、22日の3連休で客の姿が増えた。コロナウイルスで散々だったが、持ち直しの兆しが見えてほっとしている」と明るい表情。別の業者は好機を生かそうと、大人1050円の乗船料を3割引にして客の取り込みに躍起になっている。
有料駐車場も正午前に普通車で満車になった。レンタカーを表す「わ」「れ」ナンバーの車で埋まっている。
石垣市の市街地で土産店の並ぶアーケード「ユーグレナモール」も人通りが目立ってきた。東京から家族連れで訪れた女性(45)は「沖縄本島で美ら海水族館や琉球村を観光する予定だったが、人混みを避けたくて石垣島に変更した」と言う。
本島在の感染者は現時点で4人で石垣島はゼロ。南国で国内感染地からも遠ざかる地の利を背景に「安全・安心」を求める旅行者心理が働いたとみられる。
市内のホテルはコロナウイルスで客室の稼働率が例年のこの時期の60%台に落ち込んでいたが、今月15日前48)は「卒業旅行の大学生ら若者が全体を押し上げている。旅行シーズンの終わる4月からが正念場だ」と持ち直しは一時的な動きと冷静に受け止めている。