石垣市は、新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした条例の制定を検討している。空港で感染疑いがある乗客にPCR検査を受けるよう求めたり、市民に外出自粛などを要請する際、条例を法的根拠にするためだ。同様の条例は名古屋市と東京都が制定しているが、石垣市が制定すれば県内初となる。
名古屋市が3月に制定した「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を全市一丸となって防止するための条例」では、市長が感染疑いの人の体温などについて情報提供を求めたり、不要不急の外出をしないよう協力要請できることを盛り込んでいる。
東京都が4月、専決処分で制定した「新型コロナウイルス感染症対策条例」では、都民や事業者が「感染対策に協力するよう努めなくてはならない」と定める。
同様の条例制定で石垣市が狙う効果の一つに、水際対策の強化がある。石垣空港には乗客の体温を検知するサーモグラフィが設置されているが、市が発熱した観光客にPCR検査の実施を求めても、従来は法的根拠のない要請にとどまっていた。条例制定で、市の要請が一定の法的効果を持つことになる。
離島の離島である八重山は感染拡大による医療崩壊などのリスクが高い半面、来島する交通手段が航空機と船に限られるため、沖縄本島の自治体などに比べ、水際対策を徹底しやすいメリットもある。市は条例制定などを通じ、感染防止に向けた離島ならではのモデルケースを構築したい考え。
ただ、名古屋市、東京都の条例も要請への協力拒否に罰則は設けておらず、住民や観光客は要請に応じる努力義務を課せられるにとどまる。条例を制定した場合でも、感染防止対策の実効性をどこまで確保できるかが課題になりそうだ。
市は東京都と名古屋市の条例を参考に、早期に市独自の条例を制定したい考えで、庁内で調整している。