「慰霊の日」の6月23日に開かれる沖縄全戦没者追悼式を、平和祈念公園から国立沖縄戦没者墓苑に変更する案に、沖縄戦研究者らでつくる「沖縄戦全追悼式のあり方を考える県民の会」が反発している◆同墓苑が戦死者を「国難に殉じた戦没者」と表現していることに「沖縄は捨て石だった。国家の施設である国立墓苑で追悼することは、国家が引き起こした戦争に巻き込まれて肉親を亡くした県民の感情と相容れない」と主張する◆だが、別の見方をする県民もいる。郷土史に詳しい有識者の1人は「今の新型コロナウイルスだって国難。当時も日本人として、国の難局を救うため立ち上がった県民もいた」と指摘。石垣島出身の特攻隊長、伊舎堂用久中佐もその好例とする◆沖縄を「捨て石」とする考えには「他の都道府県出身の多くの日本兵が沖縄のため散華した。『国の施設で追悼するのはだめ』などと、情けないことを言うべきではない」と反論する◆当否は、県民がそれぞれの歴史観で判断すべきだ。だが玉城デニー知事は、追悼式の会場を元に戻す方向で再検討すると発表した。新型コロナの感染が落ち着き、式典の規模を拡大するためだというが、特定の歴史観押し付けに、県政が譲歩した印象を与えないか。後味の悪い結末だ。