新型コロナウイルスの感染拡大で休止していたコンサートにも再開の動きが本格化してきた◆オーストリアのウィーンでは今月5日、世界的指揮者ダニエル・バレンボイム氏が名門ウィーン・フィルを指揮し、ベートーベンやモーツァルトの名曲を披露。バレンボイム氏は「この曲は100回演奏したが、これほど上出来に聞こえたことはなかった」と語り、観客からは「感動して泣いてしまった」という声も聞かれたという◆疫病の蔓延(まんえん)でコンサートが軒並み中止になり、アーティストたちは舞台に立てなくなった。音楽しかり、演劇しかり、芸能しかり。「文化のともしびが消えてしまう」と危惧された。だが、人々の芸術を希求する心が消えることはなかった◆とはいえ、すべてが元通りになったわけではもちろんない。ウィーンのコンサートでは楽団員全員が新型コロナの検査を受け、観客の入場者数も制限。座席は社会的距離を保って配置された。我々は当分「新しい生活様式」を守って行動しなくてはならない◆世界ではパンデミック(大流行)が継続。国内でも「第2波、第3波」の到来が確実視され、東京ではまた感染者が増え始めている。何気なく「芸術を楽しめる」人生のぜいたくさを、今改めて痛感する。(N)