県内離島の新型コロナウイルス感染状況は、新たな局面を迎えたようだ。石垣島に続き宮古島でもクラスター(感染者集団)が発生し、小規模離島の竹富町でも、初めて西表島在住者の感染が確認された。石垣市や竹富町独自の緊急事態宣言が出た4月ごろの「第1波」を上回る大波が到来したと見るべきだ。
感染の急拡大は、緊急事態宣言が解除されたことで「第1波」を乗り切った、という国民の過信、慢心、気の緩みが背景にありそうだ。欧米に比べ日本の被害が軽かったことで「日本だけは特別」という思い込みが広がった傾向は否めない。
欧米に比べ、スキンシップが控えめな生活習慣やマスク着用率の高さなど、感染を防止する上で日本に有利な点があったことは事実だろう。だが、今のペースで感染者が増えれば、欧米の惨状も他人事ではなくなる。
県全体の感染者数も4日、一日当たり過去最多の83人に達し、県保健医療部の糸数公統括官は「市中感染が広がっている可能性がある」と沖縄本島の状況を指摘した。
県内の感染者総数は既に700人を超え、特に7月以降の感染者数は人口比で全国最悪の状況が続く。糸数統括官は、7月の4連休で感染が広がった可能性も示唆した。
石垣市では県立八重山病院の病床数逼迫(ひっぱく)が問題化していたが、ようやく軽症者や無症状者が療養するホテルが運用開始した。
ホテルは4月にも軽症者を受け入れた石垣市八島町の「アパホテル石垣島」で、30床が確保され、看護師などが常駐して健康観察や食事の提供などを行う。4日から軽症者の移動が始まり、病床数の逼迫はやや緩和された。
だが今後懸念されるのは、石垣市と西表島で新たなクラスターが発生する可能性だ。
初のクラスターが発生した「石垣島キャバクラAクラブ」(美崎町)を利用し、感染したと見られるショーパブ「ショーラウンジ舞」(同)の女性従業員が7月27日、西表島で行われたバーベキューに参加した。
バーベキューにはほかに9人が参加しており、うち1人が西表島で初めて感染が確認された男性だ。他は7人が西表島在住者、1人が竹富島在住者で、県はいずれも濃厚接触者と判断している。感染者が増えればクラスターになる可能性がある。
「ショーラウンジ舞」では別の女性従業員の感染も確認された。「Aクラブ」も「ショーラウンジ舞」も、いわゆる「接待を伴う飲食店」で、利用客などに感染が広がっている恐れがある。全国的にも「夜の街」関連で次々とクラスターが発生しており、楽観視できない状況と言える。
ただ八重山の場合、現時点では感染経路を追えている感染者が多数を占めている。今、感染者を把握し、隔離を徹底すれば止められる。県や市は2店舗の利用者らに早期に相談を呼び掛けているが、感染拡大を阻止できるか正念場と言えそうだ。
沖縄の感染状況は、県が設定した4段階のうち上から2番目の「感染流行期」に入った。
病床利用率も100%を超え続け、医療崩壊の危険も無視できない。ただ4月とは異なり、観光客への来県自粛や事業者への営業自粛を求める声は強まっていない。「感染防止策を徹底しながら経済を回す」という新たな命題があるからだ。
だが、このまま市中感染が拡大し、感染者数が増え続ければ、その路線も破綻してしまう。
沖縄は夏の観光シーズンに入り、八重山でも例年より少なめではあるが、4月ごろに比べるとはるかに観光客の姿が多くなった。沖縄本島の状況を注視しながら、島々の安全と健康を守る取り組みを加速する必要がある。