ファッションデザイナーで、イベントプロデューサーの山本寛斎さんが、急性骨髄性白血病のため亡くなった。76歳だった。若いころ山本さんを取材したことがある。1986年のことで、山本さんが40代前半で血気盛んなころだ◆栃木県宇都宮市大谷にある石切場跡の大規模な地下空間を縦横無尽に使ったファッションショーを開いた。単なるファッションだけでなく音楽、舞台芸術が一体化したパフォーマンスだった。地下の会場で滝のごとく大量の水を流したり、ミニヘリコプターを飛ばしたり、当時としては度肝を抜かれる仕掛けが繰り広げられた◆ショー開催数日前にご本人から話を聞いたが、ファッションショーの枠を超えた大規模なイベントであるとの説明に実感がわかず、本番を見てようやく納得した。山本さんはイベントプロデューサーとして活動を始めたばかりの時期だと思うが、既に日本人離れした感覚を持っていた◆山本さんの異母弟で俳優である伊勢谷友介さんは、インスタグラムで、病床で最後に山本さんから「俺の生き方、どうだ?」と聞かれて、「凄いです」などと答えたことを明かしている◆人生の終末で自分の生き方をこのように問うことができた山本さん。充実した人生を送った者だけが到達できる境地である。合掌。(O)