「保守的な記述」とは何か。公民教科書採択に関し、教育委員の発言や新聞紙上で知った言葉だ◆保守とは「旧来の風習・伝統・考え方などを重んじて守っていこうとすること」、対義語となる革新とは「旧来の制度・組織・方法・習慣などを改めて新しくすること」(『大辞泉』)とある。憲法改正に肯定的なら「保守」と言うようだが、制度改革なら革新ではないか◆「保守的な記述」があれば「革新的な記述」も存在するはずが、言われない。「保守的な記述」が批判・反対などの否定的文脈で使われることから察するに、「保守的」を厭う人々の印象操作であろう。逆の批判もあるのに「革新的~」は用いず、「保守的~」は否定的に用いる。意図的と言わざるを得ない◆そも、いわゆる「保守派/革新派」との範疇がすでに曖昧となり「現実主義者/夢想家」など、新しい対応も生まれている。今更になって「保守的な記述」との表現を好む人々こそ保守的に見える◆教科書は研究成果や今後の課題を記す。受け継ぎつつ発展させる、その意味で、保守・革新ともに必要な概念である。ところが物事の両義性には触れず、一面的で意図的な印象を弄ぶ―。そういうカラクリを自覚させる教育こそ、求められる。(S)