石垣市は20日、友好都市の北海道稚内市の「氷雪の門・九人(くにん)の乙女の碑平和祈念祭」に呼応した世界平和の鐘の鐘打式を新栄公園で行った。
今年は新型コロナ感染拡大防止の観点から市役所部課長級と世界平和の鐘沖縄県支部の役員らが参列。黙とうを捧げ、一人ひとりが鐘を打ち鳴らした。
中山義隆市長は「彼女たちはその責任感、使命感から職場に踏み留まり、最後まで交換業務を遂行した。現実に起こった悲劇に関心を持ち、平和を生きる尊さについて考える機会につながることを期待する」と強調した。
旧ソ連は1945年4月、日ソ中立条約を一方的に廃棄し、同条約有効期間満了に先立つ8月8日、日本に宣戦布告した。
日本は同年8月14日に軍隊の武装解除などを条件とするポツダム宣言の受諾を決し、軍の武装解除を進めていたものの、ソ連軍は侵攻を止めなかった。
樺太島民は緊急疎開を始めていたが、17~24歳の女性交換手9人は同年8月20日早朝、樺太真岡郵便局でソ連軍の侵攻に遭いながらも最後まで業務を続け、自決した。9人は公務殉職とされ、靖国神社にも合祀されている。
63年、稚内市の稚内公園内に、彼女たちを慰霊するための「九人の乙女の碑」と、樺太への望郷の念と樺太で没した多くの同胞を霊を慰めるための「樺太島民慰霊碑」(氷雪の門)が建立された。
68年に稚内市をご訪問になった昭和天皇は「樺太に命をすてしたをやめの心を思へばむねせまりくる」、香淳皇后は「樺太につゆと消えたる乙女らのみたまやすかれとたゞいのりぬる」と、御製と御歌(みうた)をお詠みになっている。
稚内市では毎年8月20日、樺太ゆかりの人々による慰霊祭「氷雪の門・九人の乙女の碑平和祈念祭」を開催しており、石垣市は92年から呼応して鐘打式を行なっている。