米大統領選。「予測不能」と言われる共和党トランプ大統領も困りものかも知れないが「予測可能」な民主党バイデン元副大統領も、不安要素が多い◆民主党政権だった2014年、当時のオバマ大統領は安倍晋三首相との首脳会談で、尖閣諸島に日米安保が適用されることを確認。しかし記者から、尖閣を狙う中国が「越えてはならない一線(レッドライン)」はあるのか聞かれ「レッドラインはない。条約を適用するだけだ」と素っ気なく答えた◆尖閣問題で日中の争いに巻き込まれたくない、という米国の後ろ向きの本音がかいま見えた。当時の副大統領だったバイデン氏が、尖閣問題でオバマ氏以上の関心を示すとは考えにくい。米国の消極姿勢が鮮明になれば、尖閣周辺で中国の行動はエスカレートすることだろう◆そもそも米国は、現在のトランプ政権も含め、尖閣諸島を日本の領土とは認めていない。領有権を巡る論争には関与せず、ただ尖閣が日本の施政権下にあることは認めている。日本が実効支配を奪われ、尖閣が「施政権下」でなくなれば、日米安保は適用されない、という解釈の余地がある◆尖閣諸島を開拓した明治の先人は、米大統領選に一喜一憂する日本の現状を悲しむだろう。結局、自分の領土は自分で守るほかない。