「米国は戻ってきた」―。大統領選で当選確実になったバイデン前副大統領が演説で高らかに宣言した。「アメリカ・ファースト(米国第一主義)を掲げたトランプ大統領が退場し、米国が再び国際社会でリーダーシップを発揮する時代が到来した、と各メディアは論評している◆だが同時に発表された閣僚人事は、多くがオバマ前政権時の幹部で「戻ってきたのはオバマ政権ではないか」との印象を強くする。「核なき世界」「イエス、ウィキャン(私たちはできる)」と美しい言葉で世界を鼓舞したオバマ氏だったが、その理想主義が世界に何を残したのか、判然としない◆沖縄でも基地反対派が初の黒人大統領誕生に大きな期待を寄せたが、オバマ氏は、淡々と前政権の路線を引き継いだ。基地反対派の失望は大きく、地元メディアからは米国の変化に期待する論調が一挙に消えた◆きれいごとに終始したオバマ氏に対し、トランプ大統領は「国境の壁」建設を強行するなど、良くも悪くも有言実行を貫いた。政治経験のない「素人」だからこそ猪突猛進したのだろう◆バイデン政権では、再び「政治のプロ」が主導権を握る。リーダーたちの美しい言葉も復活するだろう。だが、戻ってきたのが「何もしない米国」では、日本にも害が及ぶ。 (N)