トランプ前大統領が映画『ホーム・アローン2』に登場する。そのシーンを削除するかどうかが話題らしい。呆れてものが言えない(が、書く)◆発端は連邦議会議事堂襲撃事件だという。「歴史の抹消」など、共産主義国家、全体主義国家で行われるような忌むべき愚行の1つである。不都合なものは消してしまえ。さて、一体何を消したのか。意識の中に消した事実は残っている◆「破旧立新」。5年前、中国人学生が言っていた座右の銘である。実はこれ、文化大革命のスローガンだ。毛沢東の権力闘争と党内闘争が大衆運動化した文革では「造反有理、破旧立新」とのスローガンを掲げた学生組織「紅衛兵」が各地で運動を展開。多くの文化財や書物を破壊した◆古い風俗習慣・思想・文化を破壊、排除し、新しいものを確立する―。かの学生は「破旧立新」を前向きな軽いニュアンスで使っていたが、それでも首を傾げる。現在とは過去によって現在なのである。旧きを破壊して立てる新しい事物など、ただの泡沫(うたかた)ではないか◆「黒歴史」。なくしたいほど恥ずかしい過去を表す若者言葉だ。しかし過去を否定するのは、常に安全圏にいる現在の自己である。審判を下した自己の過ちは、さて、いつ誰が、正してくれるのか。(S)