韓国の文在寅大統領は、一線を越えたのではないかと不安になる。北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長とともに北朝鮮「革命の聖地」とされる白頭山(ペクトゥサン)を訪れ「ずっと実現しなかった夢がかなった」などと喜んで見せたのだ◆北朝鮮による独裁体制の犠牲になった人たちは、日本人拉致被害者を含めて数知れない。民主主義の擁護者であるべき韓国大統領が、独裁体制を象徴する地ではしゃぐ姿を、世界はどのように見るだろうか◆文大統領は金委員長と南北首脳会談を重ねるなど、北朝鮮に対する融和政策を積極的に推進している。しかし北朝鮮が非核化に前向きな姿勢を見せたのは、文大統領の笑顔にほだされたからではない。トランプ米大統領が、北朝鮮の「完全な破壊」にまで言及し、軍事力をちらつかせて譲歩を迫ったからだ◆米国も最近は北朝鮮に対する太陽政策に傾いているように見えるが、背後には常に軍事力の行使という選択肢がある。ひたすら友好ムードに徹し、北朝鮮の宣伝に利用されかねないレベルまで踏み込んだ文氏との決定的な違いだ◆金氏と満面の笑みで握手する文氏の姿を見ていて思い浮かぶキーワードは「平和」ではなく「軟弱」だ。弱いリーダーが演出する平和が、砂上の楼閣でないよう願うばかりだ。