新型コロナウイルスワクチンを巡り、石垣市と浦添市の「友情」が話題になっている◆ワクチン不足で悩む浦添市に対し、一足先に接種を進めていた石垣市が余剰ワクチンを提供。その恩返しとして浦添市は、2回接種者に抽選で石垣島旅行が当たるキャンペーンを開始した。石垣市にお金を落としてもらう趣旨だ◆他市へのワクチン提供という異例の決断をした石垣市と、感謝の気持ちを形にした浦添市の双方を賞賛したくなる。石垣市の中山義隆市長と浦添市の松本哲治市長は共に今年54歳で、親しく連絡を取り合う仲という。両市長の個人的な絆が、それぞれの市民にメリットをもたらした好例だ◆だが「いい話」だけで終わらせてはいけない。このエピソードの背景にあるのは、県内市町村の「ワクチン格差」だ。石垣市や宮古島市のように急ピッチで接種を進めた自治体は数少なく、ほとんどの自治体がワクチン不足と接種率低迷に苦しんできた。石垣市と浦添市も県のワクチン配分方法を疑問視し、石垣市に至っては国に直談判したこともあった◆県のリーダーシップが見えないことが、現在の全県的な接種率低迷を招いていないか。市町村が互いに融通しないとワクチンを確保できないなんて、本来はあってはならない話だろう。