「オープンリール」はカセットテープ普及前に一般家庭などで行われていた磁気テープによる録音方式だ。沖縄国際大学が石垣市出身の元早稲田大学総長、大濱信泉氏(1891~1976)の肉声を録音していたが、音声は長く眠ったままになっていた◆同大が音声をデジタル化し、市教委に贈呈。その際に報道陣にも公開された。大濱氏の写真は何度も見ているが、本人の声を聞くのは初めてだ◆当時、大濱氏は81歳。終始一貫して落ち着いた口調で、沖縄国際大創立時の経緯を振り返る。かなりの高齢だが口ごもる場面はなく、一連の経緯を淡々と順序立てて説明し、具体的な人名も出てきて説得力がある。極めて知的な人物という印象を受けた◆八重山で大濱氏は歴史上の人物のように思われているが、考えてみると50年前にはまだ存命だった。生前の謦咳(けいがい)に接した人たちも現在、少なからず残っているはずだ。それでも第三者から間接的に話を聞くことと、録音で直接本人の証言を確認できることには天地の差がある。話の信ぴょう性が増し、大濱氏の人柄、当時の空気感なども生々しく伝わってくるからだ◆音声は大濱信泉記念館に収蔵されるようだが、多くの人に聞いてもらい「郷土の偉人」を身近に感じてほしい。