陸自戦闘車与那国初走行 台湾有事想定、日米が訓練

与那国空港を出て自走するMCV=17日、与那国町

日米共同統合演習「キーン・ソード23」の一環として、陸上自衛隊は17日、輸送機で16式機動戦闘車(MCV)を日本最西端の与那国島に空輸。MCVは与那国空港から公道を走行し、陸自与那国駐屯地に入った。MCVの公道走行は県内初となる。与那国島は台湾との距離が約110㌔。中国が台湾に軍事侵攻する「台湾有事」を想定し、日米の連携を強化する訓練である可能性が高い。
自衛隊のC2輸送機はこの日午前、与那国空港に到着。機内から105㍉ライフル砲を搭載したMCVが搬出された。
空港入口周辺には島外から駆け付けた市民団体のメンバーら10人ほどが集結。「与那国島を戦場にしないで」などと記された横断幕や看板を掲げ、日米共同統合演習に抗議した。
与那国島での演習には米海兵隊が初めて参加し、自衛隊と連絡調整所を設置する。
演習について与那国自衛隊協力会の与那原繁副会長は「中国の習近平主席が3期目に入り、中国が台湾を取りに来る可能性が高まっている」と警戒。MCVの公道走行に対しては「防災訓練で消防車を使うことと同じで、軍事演習で戦闘車を使うのは当たり前。中国に対する抑止力を向上させることは大事だ」と強調した。
一方、町議会の崎元俊男議長は「日米合同演習自体が想定外でびっくりしている。基地の中のことは感知できないが、目の前の公道を戦闘車が走ることで、基地が拡大するのではないかという懸念はある」と指摘。「一部に心配する人がいることは国も考えてほしい」と要望した。
糸数健一町長は演習を受け入れる姿勢を示している。
陸自ホームページによると、MCVは4人乗りで、公道での高い走行性を持ち、火力と機動力を駆使してさまざまな事態に対応する。最新機器を多数採用し、射撃精度も高い。
陸自は18日も与那国空港を使用する予定。「キーン・ソード23」は19日まで、県内外で行われる。
台湾を巡っては10月、中国の習近平国家主席が「武力行使の放棄は絶対に約束しない」と言明。中国軍は8月に台湾を包囲した軍事演習を実施し、与那国島や波照間島の周辺にも中国の弾道ミサイルが着弾した。軍事力による威嚇を強める中国の姿勢に対し、八重山住民の懸念が強まっている。
政府は30日には、与那国島で弾道ミサイル飛来を想定した避難訓練を実施する。

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