「釣魚島(尖閣諸島の中国名)は古来、中国固有の領土。貴船は我が国の領海に侵入した。直ちに退去してください」―。1月29、30の両日、尖閣諸島周辺海域の調査を実施した石垣市の調査船。船内の無線機からは、尖閣周辺で航行を続けている中国海警局の艦船が調査船と海上保安庁の巡視船に対し、退去を呼び掛ける音声が流れた。調査船に同乗した八重山日報の記者は、尖閣諸島の侵奪を狙う中国の圧力が目前に迫っている現状を実感した。
調査船は事前に海保の指示に従い、30日午前6時に尖閣諸島周辺に到着した。この時、巡視船と中国海警局の艦船は、既に尖閣諸島周辺に近づかないよう、相互に警告し合っていた。
午前6時1分、調査船内の無線機が、中国艦船の警告を受信した。船内に緊張が走る。
「日本国・海上保安庁、こちらは中国・海警。貴船の主張は受け入れられない。釣魚島は古来より中国固有の領土で、周辺12海里は中国の領海だ」。片言の日本語だった。
即座に、海保巡視船PL81の警告も流れた。「尖閣諸島は日本の領土である。貴船の主張は受け入れられない」。さらに中国語でも呼び掛けた。日中のやり取りはこのあとも続いた。
調査船の周辺では5隻の巡視船が警護に当たった。中国艦船2隻が調査船への接近を試みようとしたが、並走する巡視船が進路をふさぎ、中国艦船の調査妨害を阻止した。
午前6時半、後方にいた中国艦船1隻が調査船から離れたため、巡視船1隻も同船と並走し離れていった。別の1隻はなおも調査船を追い続けたが、並走する巡視船1隻は接近を阻止し続けた。
午前7時過ぎ、夜明けに合わせるように尖閣諸島・魚釣島が調査船の進行方向に姿を現した。調査船は午前8時までに予定海域に到着。時計回りに島周辺を一周し、ドローンで空撮した。海上慰霊を行う中山義隆市長や市議団も撮影した。
調査船が魚釣島周辺を離れたのは正午ごろ。石垣島に帰島後、翌31日の会見で東海大の山田吉彦教授は「海保の協力で調査ができた。中国海警局は視界にすら入ることが少なかった」と振り返った。