中国の偵察気球と酷似した飛行物体が2020年、東北地方でも目撃されていた。だが当時の河野太郎防衛相は記者会見でこの件を聞かれ「気球に聞いてください」「安全保障に影響はない」と、かわした◆日本政府は、物体が中国の偵察気球である可能性を把握できなかったのか。それなら日本の領空警備に穴が開いていたことになる。物体の正体を知っていながら発表を控えたのなら、中国の顔色をうかがっていたと言われても仕方がない◆日本政府に中国への「忖度(そんたく)」があったなら、それは弱腰外交として批判されるべきか、あるいは平和外交と言い換えるべきか。国民の判断も試される◆物体は東北だけでなく、九州、沖縄でも目撃されていた。玉城デニー知事は中国との平和外交を訴え、自ら独自の外交を展開する構えだが、台湾有事の危険性が指摘される中、沖縄としては簡単に見過ごせない。対話は必要だが、クギは刺すべきだ◆米国に偵察気球を撃墜された中国は「米国の気球が違法に中国の領空を飛行した。米国は世界最大のスパイ常習犯だ」と逆切れしてみせた。自国の国際法違反を正当化するためのウソだろう。中国政府は決して、実直な沖縄県民の「平和外交」に乗るようなお人好しではなさそうだ。