石垣市の尖閣諸島周辺海域で常駐し、領海侵入を繰り返している中国海警局の艦船が、2つの船隊で「専従体制」を組んだと見られることが、防衛大学校戦略研究室の中澤信一准教授の分析で分かった。各船隊は最近、おおむね1カ月交代で尖閣海域に派遣されている。中澤准教授は「中国側は(海警局の艦船を)スケジュールに沿って海軍式に運用している可能性がある」と指摘した。
日本の海上保安庁は、尖閣周辺で巡視船の専従体制を組んで領海警備に当たっている。中国側も自国の尖閣領有権主張と日本の実効支配打破を狙い、海保と互角の体制を組んでいる可能性が高くなった。
中澤准教授は、中国海警局が尖閣海域に派遣する艦船のデータを海保の発表や新聞記事をもとに分析し、派遣パターンを割り出した。
尖閣海域の中国艦船は通常4隻の船隊を組んでいるが、司令塔が存在するかは不明。2隻ずつに分派されて活動することもある。また、4隻のうち1隻には必ず機関砲らしきものが搭載されている。
2021年10月9日までは、中国各地の港を母港とする艦船の混成船隊だったが、同日以降は、上海と寧波を母港とする2つの船隊に固定化され、それぞれが交代で派遣されている。中国側は、この2つの船隊で専従体制を組んだ可能性が高い。
中澤准教授は「専従体制を組むことで乗組員も尖閣海域に慣れ、練度が高まる。不測の事態が減ることになる」と専従体制のメリットを説明。偶発的な事態から日中の対立がエスカレートしないよう、中国側に一定の政治的配慮が働いていると推測した。
尖閣海域への派遣期間は20年1月15日以降、毎月15日を基準日として1カ月交代のパターンが多くなった。領海侵入は、日本漁船を追跡している場合以外は2時間程度が多く、中澤准教授は「派遣船隊の実績づくりのノルマ」と見る。
中国は21年2月から海警法を施行し、尖閣海域で海警局艦船の武器使用が可能になった。海警局艦船が現在まで実際に武器を使用した例はないが、尖閣周辺で操業する日本漁船は執拗に追跡している。海保の巡視船が漁船を警護しており、現時点で日本人に危害は及んでいない。
中澤准教授は「武器使用は自制しているものと認められるが、尖閣周辺で航行する日本漁船は『徹底的に追跡して排除する』というのが中国側のポリシー。その行動はこれからも継続されるだろう」と予測した。