全町民を一日で島外へ 台湾有事念頭に避難実施要領 公民館の「組」単位で移動 与那国

中国が台湾に対する軍事的圧力を強める中、台湾に近い日本最西端の与那国町は、有事を念頭に置いた態勢づくりを加速している。他国からの武力攻撃などを想定し、町民の避難方法を検討した「避難実施要領」を6日までに公表。全町民を1日で島外に避難させる方針で、空路と海路、海路のみの2パターンを作成した。避難の実施単位は、各公民館の「組」単位でまとめる。
全町民は約1700人。観光客なども避難者数に加え、1778人が避難すると仮定した。祖納集落には3公民館に6つの組、久部良集落には久部良自治公民館に2つの組、比川集落には比川自治公民館に1つの組がある。要領では、住民の顔や性格などが熟知できる「組」単位での避難が理想的としている。
島外避難の2パターンのうち、島外避難に船舶と航空機を活用するパターンでは、県の避難方針に基づき、全住民が1日で石垣市に避難し、その後、石垣市から九州への避難を完了する。
祖納集落は祖納港と空港、久部良集落は久部良漁港と空港、比川集落は久部良漁港から避難する。特別養護老人ホームの入所者などは個別の状況に応じて輸送手段を選択する。
海路は福山海運の「フェリーよなくに」、壱岐・対馬フェリーの「みかさ」を石垣―与那国間でそれぞれ1日2便、空路は琉球エアーコミューター(RAC)の航空機2機を1日11便運航。「フェリーよなくに」は1日最大約240世帯約480人、「みかさ」は1日最大約370世帯740人、航空機は1日最大約260世帯520人の輸送力を見込む。
1日当たりの最大輸送力は船舶と航空機で計約1740人となり、平素の7倍以上の輸送力を確保できる。
天候の状況などにより船舶が使用できないパターンでは、町民らは各集落からバスで与那国空港へ向かう。
与那国空港で運用可能な最大の航空機であるボーイング737を1日12便確保し、骨幹輸送の福岡空港、鹿児島空港以外で最も距離が短い熊本空港を目的地と仮定。与那国島から約150分での到着を見込む。
航空機の機材は通常仕様(定員165人)4機と担架が搭載可能な要配慮者対応可能機(定員159人)3機の計7機体制。1日当たりの最大輸送力は別のパターンと同様、1700人以上となる。
町は要領で、武力攻撃前に、様々な数字をもとに検討を進めることが重要と指摘。「これを原型にして、今後も様々なパターンを国・県・関係機関と共に連携をとりながら作成していく」と強調した。

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