玉城デニー知事の7月訪中が決まった。習近平国家主席との面会も調整されているという。浮かれたわけではないだろうが、玉城氏は26日の県議会で、尖閣諸島の領有権を持ち出された場合の対応を問われ、「発言しないことも必要」とまで、手の内を明かしてしまった。3月の訪米では軽くあしらわれ、今も政府、官邸から冷遇されている。習氏との面会を実現させて、鼻を明かしてやりたいところだろう▼だが、そんな思惑も中国側はお見通し。玉城氏の訪中1カ月前のタイミングを図ったように、「人民日報」を使って、習氏は「福州と琉球は縁が深い」と沖縄に初めて言及した。「交流への意欲の表れ」と受け止めるのは玉城氏ぐらいか。沖縄の歴史を掘り起こして日本政府を揺さぶり、沖縄を新たな「対日カード」とする意図は、だれの目にも透けて見える▼公安調査庁が平成29年にまとめた報告書は、「米国は、琉球の施政権を日本に引き渡しただけで、琉球の帰属は未定である」と主張する琉球帰属未定論が中国内の大学やシンクタンクで広がり、日本の関係者と学術交流を進めていると分析。沖縄で中国に有利な世論を形成するための分断工作との見立てだ。玉城氏がこれを知らぬはずはない▼中国は、訪中までの玉城氏の言動を注視し、モノ言わぬ知事をとことん利用しようとするだろう。もっとも、米国のブリンケン国務長官のように「コ」の字型に配列された席で、お誕生席の習氏に謁見するように席が配置されたら、何も言えなくなるか。