国民は平和な日常に慣れ切ってしまったが、一歩国外に出ればウクライナ戦争に加え、中東情勢もにわかに緊迫化し、戦争の脅威が目前に迫っている◆軍事力や外交力に乏しくても、かつての日本には経済大国としての威光があった。だが現在、経済は衰退の一途をたどっており、国民が油断すれば遠くない将来、先進国の地位さえ失うかも知れない◆沖縄復帰前後の世代までは、人生の大部分を飽食の時代で過ごすことができた。だが、これからの若者たちを待ち受けているのは恐らく、いばらの道だ。長い安逸の中で、日本人がハングリー精神を失ってしまった反動だと考えるのは、うがち過ぎだろうか◆国技である大相撲がいい例ではないか。今や外国出身力士の優勝が当たり前。アウェイ(敵地)で成功するという強い信念を持って角界に乗り込んできた外国の若者たちと、何不自由なく育った現代日本の若い力士たちでは、力の差が歴然とするのも当然だ◆戦後日本が享受してきた平和や豊かさは、揺るぎない精神的基盤に立脚したものではなかった。結局それは単なる「ぬるま湯」だった可能性を、自省の意味を込めて、考えなくてはならない。気骨ある日本人がまだ大勢残っている今が、国の再起に向けた最後のチャンスだろう。