27日から県立博物館・美術館で始まった「沖縄の染と織の至宝」展に自らの収集品を提供した桃原用昇氏。県内の作家たちが丹精込めて創り上げた傑作が、次々と県外の市場に流出している現状に危機感を抱いたことが、コレクションを始めたきっかけだった。収集品は将来的に、自らの故郷である石垣市に寄贈する意向で、収集品を保存・展示するため「新博物館を早期に建設してほしい」と訴える。
2003年、石垣市在住の県指定無形文化財「八重山上布」保持者・新垣幸子氏の個展が東京で開催され、作品を見学。「八重山の歴史と風土から生まれた上布」と感銘を受けた。当時、新垣氏の作品はほとんど県外の市場で取り引きされており、県内で一般県民の目に触れる機会は少なかった。
桃原氏は石垣市立博物館に新垣氏の作品を寄贈したいと決意。現在までに112点収集したという。その後、市出身の国指定重要無形文化財「紅型」保持者・玉那覇有公氏の作品など、八重山と関わりが深い作家の作品を中心にコレクションの範囲を広げた。
「沖縄が世界に誇れる至宝が染と織」と、伝統文化の美しさに魅了される桃原氏。老朽化と狭隘化が指摘されている石垣市の現博物館では作品の保存や展示が難しいと指摘し、新博物館建設を八重山の各界に働きかけてきた。
この日、展示会の開会セレモニーに出席した中山義隆市長は、新博物館建設に向けた準備室設置を明言。目の前で聞いた桃原氏は「大きなニュースだ」と喜びを隠さなかった。