「沖縄ヘイト」とは何か 過激な主張、県民感情から乖離

「沖縄ヘイトにあらがう」をテーマにしたシンポジウム=10日夜、琉球新報ホール

 沖縄の基地反対派に対し、本土から寄せられる批判の声を「沖縄ヘイト」と呼び、沖縄に対する差別であると訴える風潮が沖縄メディアでは主流になっている。「沖縄ヘイト」とは何か改めて考え直そうと10日、那覇市内で「沖縄ヘイトにあらがう~私たちに何ができるか~」をテーマに開かれた琉球新報社主催のフォーラムに、八重山日報の記者が足を運んだ。登壇者からは「植民地主義とヘイトとレイシズム(差別主義)は同じ。琉球人として独立して行動しよう」(市民団体「ニライ・カナイぬ会」共同代表の仲村涼子氏)などと、一般の県民目線からすると、かなり過激な発言も飛び出した。他国の脅威を背景に沖縄の安全保障を強化しようとする政府の方針は、沖縄への民族的差別なのか。登壇者の主張を聞けば聞くほど、逆に「沖縄ヘイト」とは何か分からなくなった。(仲新城誠)

 パネル討論で仲村氏は、自らを「琉球の先住民族。祖国は日本ではない。琉球だ」と自己紹介。沖縄県が制定した反ヘイト条例に、民族を理由とした差別を禁止する条項が入っていないことに触れ「国連から(沖縄の人たちを)先住民族だとする勧告が出ている。先住民族を自認する人がいるのに、なぜ『民族』という言葉を抜いたのか。琉球はヤマトの植民地だ」と批判。現条例は「琉球人を差別していいというお墨付きを与えている」とした。
 同じくパネル討論者の1人で「むぬかちゃー」の知念ウシ氏が「(私は)日本人じゃなくてよかった」と客席に語りかけると、会場から大きな拍手が。続けて知念氏は「私たちは同じ日本人として扱われていない。もう(日本を)見切らないといけない。復帰も望んでいたものではなく、日本へ再併合された」と語気を強めた。
 沖縄への米軍基地集中に関し、本土の人たちに「あなたたちの基地だから、持って帰りなさい」と呼び掛けた。
 基調講演した反ヘイト団体「のりこえネット」共同代表の辛淑玉(シン・スゴ)氏は、オスプレイに反対した自治体首長らの銀座デモに「売国奴」という罵声が浴びせられたことを挙げ「沖縄は中国に対する盾(たて)になって当たり前だという考え方」と説明。朝鮮人差別の歴史を振り返り「(差別の)次のターゲットは沖縄。沖縄は日本の植民地として、日本の犠牲になる。沖縄はもう一度、沖縄戦をやることになる。戦争は利権だから」と警告した。
 辛氏に続いて基調講演した毎日放送ディレクターの斉加尚代氏は「軍事化を推進するための歴史改ざんの動きは、沖縄ヘイトと一致している。日本経済が衰退し、自信を失った人たちが『日本は素晴らしい国』という幻想にすがり、敵を探している」と指摘。パネル討論者でノンフィクションライターの安田浩一氏は「日本最大のヘイト団体は自民党だ。包括的な差別禁止法をつくるために、政治を変えないといけない」と政治の変革を求めた。
 シンポを聞く前まで「沖縄ヘイト」とは、基地問題に対する本土と沖縄の対立を民族的な差別問題にすり替え、本土の反論を封殺しようとする基地反対派の戦略だと考えていた。
 この日の登壇者の発言からもそういう傾向は確認できたが、実際のところ、普通の県民で「沖縄が本土の日本人から民族的な差別を受けている」と感じている人はほぼ皆無だろう。それが沖縄を地元として取材する記者の肌感覚だ。
 メディアで喧伝される「沖縄ヘイト」の主張とは、実際には一部の特殊な意見であり、行き過ぎると一般の県民感情と乖離(かいり)した机上の空論になってしまう恐れがある。

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