重要拠点指定で「ねじれ」 市町歓迎、県は不同意

特定重要拠点の候補とされる新石垣空港で行われた日米共同訓練。民間機の手前に駐機しているのが陸自のオスプレイ=10月24日

 台湾有事をにらみ、自衛隊や海上保安庁が円滑に利用できるよう政府が重点的に整備を進める「特定重要拠点空港・港湾」の指定候補に、八重山から新石垣空港、与那国空港、波照間空港などが選ばれた。従来から空港・港湾の機能拡充を求めていた石垣市、与那国町は「千載一遇のチャンス」(与那国町の糸数健一町長)などと指定を歓迎。一方、県は自衛隊などの利用計画が不明確だとして「現時点では指定に同意できない」との考えを政府に伝えた。特定重要拠点の指定を巡り、県と市町との間で「ねじれ」が生じた形だ。

 糸数町長は7日、県庁に池田竹州副知事を訪ね、与那国空港の滑走路延長や島内での新港整備などを要請。特定重要拠点の指定には積極的に応じる考えを示し、池田副知事に「(県も)議論のテーブルについて検討してほしい」と協力を求めた。
 石垣市も県に対し、観光振興を目的に2018年から新石垣空港の滑走路延長を要請してきた。台湾有事の懸念が新たな課題になってからは、住民や観光客のスムーズな避難のため空港の機能を強化する目的も加わった。
 中山義隆市長は八重山日報の取材に対し、政府が新空港を特定重要拠点に指定した場合について「受け入れる」と明言した。市議会も県に対し、滑走路延長に協力するよう求める意見書を急きょ、12月定例会中に可決した。
 波照間空港は民間航空の撤退後、遊休状態が続いていたが、第一航空が来月の再開を目指して運航訓練を開始している。特定重要拠点の指定について、竹富町の前泊正人町長は町議会12月定例会で明確な姿勢を示さなかった。ただ糸数町長は池田副知事との面談で「八重山3首長の思いは一つだ」と述べた。
 石垣市や与那国町が指定受け入れに前向きなのは、中国が台湾に侵攻した場合、市民、町民や観光客が直接的な危険にさらされる可能性が高いためだ。
 与那国町と台湾は約110㌔の距離にあり、有事の際は戦略的に重要な拠点。石垣市の行政区域である尖閣諸島は、中国が「台湾の一部」と主張し続けてきた。
 空母航行や中国海警局船の領海侵入など、八重山周辺でも中国の軍事的活動は活発化している。自衛隊関係者は、中国が台湾と同時に八重山に侵攻する可能性を予測する。
 県内では八重山も含め7空港と5港湾が指定候補だが、県は慎重な姿勢だ。池田副知事は糸数町長の要請に対し「懸念をクリアにするため、国にいろいろと確認している」と述べ、最後まで慎重姿勢を崩さなかった。
 県議会で玉城デニー知事を支持する革新系の与党からは、指定によって空港や港湾の軍事利用が加速し、有事には攻撃対象になると危ぐする声がある。
 糸数町長は「県は、何でもかんでも軍事利用や自衛隊の増強に結びつける。島に住むわれわれが、豊かに暮らせる施策を講じてほしい」といら立ちをあらわにする。ただ「国も県の頭越しにはできないだろう」と指摘。県の理解を得るため、政府が丁寧な説明を尽くすよう求めた。

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