北陸新幹線が16日、金沢から敦賀まで延伸開業した。東海と北陸を結んでいた在来線特急「しらさぎ」が敦賀発着となり、「名古屋発金沢行き」の特急「しらさぎ」は姿を消した▼私事ながら、思い出の詰まった特急だ。大学入試のために緊張して乗った記憶。入学でき、再び乗車して訪れた兼六園は桜が満開だった。年末に帰省し、新年に乗車すると、車窓の景色が一変し、雪の壁の中を進んでいるようで、自然の猛威を痛感した。就職が決まり上京時には、社会人への希望と不安が交錯するまま車内で揺られていた▼人生の終盤にさしかかって、若いころに馴染んだものが消えていくのは寂しい。延伸開業により元日に能登半島地震で甚大な被害を受けた地域の復興には弾みがつくだろう。一日も早く、能登の人々に穏やかな春が訪れるよう願うばかりだ▼テレビニュースには「長い間ありがとうございました」の横断幕を掲げて最終列車を送り出すファンや駅員の姿が映し出されていた。自分もその輪に加わり、感謝を伝えたかった。勝手ながら、このコラムの場で感傷を書かせてもらった。