1998年から琉球諸島の海岸に流れ着く漂着ごみの調査を行っている防衛大学校の山口晴幸名誉教授(75)が、今年27年目となる調査を行った。山口氏は「ほとんどが中国から漂着していると、はっきり言えるようにしないと」と話し、中国に対し、漂着ごみ対策を要求すべきとの考えを示す。
調査は今年3月13日~4月15日までの34日間、八重山諸島7島(与那国島、波照間島、小浜島、西表島、黒島、竹富島、石垣島)の計62海岸で実施。うち清掃活動が実施されていなかった41海岸でごみの総量をカウントした。
レポートによると、八重山諸島は特に島北側の西部から東部の海岸域に大量の海洋漂着ごみが多く、住民や観光客が立ち入らない湿地・岩礁域など清掃活動が難しい海岸では「想像を絶する深刻な状況」と記している。また漂着ごみの80%ほどは中国製のごみで、国内のごみは2~3%にとどまるという。
山口氏が着目している漂着ごみの一つが、主に中国から漂着するプラスティック製のブイ。今年の調査では「ウリ型」と呼ばれるブイが5518個見つまり、丸型ブイの3195個を初めて総量で上回った。
ウリ型ブイは長さ約55㌢、幅約25㌢、主に赤や青の半透明で、中は空洞。山口氏は「ウリ型ブイは、従来のブイよりもろく、漂着後に『マイクロプラスティック』化しやすい」と懸念する。
マイクロプラスティックは大きさ5㍉以下の微小プラスティックの総称。一度自然界に流出すると回収は難しく、動物プランクトンなどの極小生物が食べると海洋・沿岸生態系に深刻なダメージを与えるとされる。
漂流ごみイコール「海洋越境ごみ」と指摘する山口氏。水際対策は現状「回収除去作業(清掃活動)に尽きる」とするが「ボランティア組織が色々な海岸で清掃していても、本来は行政が責任を持って行わなくてはならない問題」と強調。漂着ごみのマイクロプラスティック化による自然破壊への対策も急務であるとして、専門組織の設立を訴える。
また漂着ごみの発生源である近隣諸国に対し「情報発信を図ることが必要」と求めた。