NHKのラジオ国際放送などで、中国人スタッフが石垣市の尖閣諸島について「中国の領土」などと発言した問題で、石垣市議会(我喜屋隆次議長)は9月定例会初日の29日、NHKに対する抗議決議を与党などの賛成多数で可決した。総務相などに万全な再発防止策を求める意見書も同様に可決した。野党は尖閣発言に関する問題意識を共有する一方、決議の文言が「偏っている」と反対した。
抗議決議と意見書は与党の高良宗矩氏が提案。中国人スタッフの尖閣諸島に関する発言のほか「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」などと主張したことも「政府の見解とは異なる」と問題視した。
抗議決議では「個人的な発言ができてしまうずさんなNHKの管理体制、公共放送・国際放送としての報道体制のあり方には大きな疑念が生じている」と指摘。「中国側が主張する虚偽内容が我が国の国際放送から放送されたことは看過できない重大な問題」と訴えた。
意見書では総務省とNHKに対し、原因究明や過去に同様な事案がなかったかを含めた調査を求めた。
野党の長浜信夫氏は、尖閣諸島は中国領とする中国人スタッフの発言を批判する一方、慰安婦問題などを念頭に「政府見解がすべてではない」とも指摘。
砥板芳行氏も「政府見解と異なる発言をしてはいけない、というのは発言の自由を制限することになる。再発防止や修正放送を求めるのはいいが、この決議は偏っている」と疑問視した。
抗議決議などで問題を大きくすることで、かえって発言した中国人スタッフの「政治的な目的に加担することになりかねない」とも懸念した。
内原英聡氏は「中山義隆市長も政府見解と異なる発言を投稿している」と追及。NHKに抗議する前に、中国人スタッフの発言に関し、NHKがどの程度関与したかの調査結果を待つべきだとした。
中山市長はX(旧ツイッター)に「台湾は国家」と投稿したことがある。市長の投稿に関し高良氏は「内原氏が個人的に抗議すればいい」とかわした。
NHKの責任については「NHKは被害者だと言うが、国際放送には国民の税金が入っている」と述べた。
与党の友寄永三氏は、政府見解やNHKの責任に関して与野党で意見が割れた現状に「(意見の相違で)『尖閣は中国領』と言っていることに反対できなくなるのは、非常におかしな話だ」と決議に賛成した。
採決では与党と中立2人の11人が賛成、野党と中立1人の9人が反対した。1人が欠席した。