29年度に展示施設開設 坑口、坑道の一部公開へ 第32軍司令部壕

第32軍司令部壕保存・公開基本計画検討委員会の冒頭、あいさつする玉城知事=19日午後、那覇市の県自治研修所

 沖縄戦で旧日本陸軍が首里城地下に構築した「第32軍司令部壕」の保存・公開に向け、県が策定した基本計画素案が19日、那覇市で開かれた同計画検討委員会(伊東孝会長、13人)の第2回会合で承認された。壕の全体像などを紹介する展示施設を2029年度に開設。26年度に「第1坑口」、30年度に「第5坑口」「第5坑道」と呼ばれる箇所を公開する方針を盛り込んだ。立ち入りが不可能なエリアに関しては、仮想現実などの先端技術を活用した展示も検討する。

 第32軍司令部壕は首里城が立つ丘の地下約10~30㍍を南北に貫通し、総距離は約1㌔。複数の坑道が枝分かれし、5箇所の坑口がある。
 計画案では、壕全体を紹介する展示施設を第5坑道上にある県立芸大芸術文化研究所東側駐車場に建設する。
 第5坑道は一部を一般人が見学可能なエリアとする。展示施設内にエレベーターと、らせん階段を設置し、第5坑道に下りられるようにする。現在の出入り口である第5坑口周辺にはアクセス道と建屋を整備する。
 第1坑口は崩落でほとんど消失しているが、周辺で遊歩道や説明版を整備して存在を周知する。デジタルジオラマなどの先端技術で地中に埋没している坑口・坑道を見学者にイメージしてもらうことも検討する。
 第2、3坑道は93年度からの県の試掘調査で進入可能になったが、安全確保や劣化防止を図る観点から、一般人は立ち入り不可とする。
 地上にある首里杜館ホールでの企画展、QRコード、VR(仮想現実)技術、AR(拡張現実)、MR(複合現実)技術を活用し、見学者のモバイル端末で壕の位置や規模感を体感してもらう方法を検討する。
 第1坑道は崩落し、進入できない。第2、3坑口は詳細な場所が不明。第4坑口・坑道は民有地にあり、内部の状況は分かっていない。
 県は25年度から展示施設の用地取得、第1坑口遊歩道、第5坑口アクセス路の設計、第5坑道の土質調査などに入る。第5坑口周辺は整備過程も含め26年度から暫定公開する予定。
 県は今月中旬から基本計画素案の県民意見募集(パブリックコメント)を実施し、来年3月中旬に検討委の第3回会合を開いて素案を最終確認、年度内に基本計画を策定する。
 検討委の冒頭、玉城デニー知事は「平和を希求する沖縄の心を広く国内外に発信し、平和発信拠点を形成する。沖縄戦の実相と教訓の次世代への継承に努める」と述べ、壕の保存・公開に期待した。

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