沖縄県の米国ワシントン駐在事務所が株式会社として違法に運営されていた問題を巡り、県議会(中川京貴議長)は20日の11月定例会最終本会議で、強力な調査権を持つ地方自治法上の百条委員会を自民、公明の賛成多数で設置した。県議会の百条委は2014年、当時の仲井真弘多知事の辺野古埋め立て承認に関して設置されて以来、10年ぶり4回目。与党と中立の維新は設置に反対した。
野党の仲里全孝氏(自民)が百条委設置の動議を提出した。「一般質問、質疑を通して解明できない疑惑のレベルになってしまっている。真実であることを担保する証言を得るため、百条の調査権限を発動しなくてはならない」と強調した。
賛成討論で宮里洋史氏(自民)は「(事務所が)米軍基地の負担軽減を求める声を受けてさまざまな活動を行うことは一定の理解ができるが、大前提は法令順守。一連の問題は行政への信頼を根底から覆す」と指摘。
その上で「百条調査は議会の権能のうち最も強い部類に入る。私たちも覚悟を持って動議を提出した。うみを出し切って正しい沖縄県政を取り戻す」と強調した。
与党の次呂久成崇氏(おきなわ新風)は反対討論で「知事と執行部は猛省し、指摘された部分は速やかに是正し、議会や県民に丁寧に説明責任を果たし、信頼回復に努めてほしい」と要望。
一方で「県は隠蔽の意図はなく、不備があったことを認め謝罪し、庁内手続きや関係法令に基づいて速やかに是正していくと何度も答弁している」と県政を擁護した。
百条委の名称は「ワシントン駐在問題調査特別委員会」で、委員は15人。初会合で、委員長に座波一氏(自民)、副委員長に西銘啓史郎(自民)を選任した。26日の次回から本格的な審議に入る。
県は2015年、当時の翁長雄志知事の肝いりで、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を米政府に訴えるためワシントン駐在事務所を設置。実態は県が100%出資した株式会社だったが、県は地方自治法上必要な議会に対する出資法人の経営状況報告を行っていなかった。
駐在員は県職員と株式会社の社長、副社長の身分を併せ持っていたが、地方公務員法上必要な営利企業従事許可も取得していなかった。事務所が株式会社だった実態は10月に明るみに出たが、会社設立に関する文書は引き継がれておらず、玉城デニー知事や県幹部は「知らなかった」としている。