【視点】「オール沖縄」は存在意義失った

 改めて「オール沖縄」は終焉(しゅうえん)に近づいているとの思いを強くする。26日投開票の沖縄市長選で、自民、公明が推薦した前県議の新人、花城大輔氏が、社民、共産、立民、社大推薦の「オール沖縄」の対立候補を破り、初当選した。今月の宮古島市長選でも、保守系新人で県知事公室長などを歴任した嘉数登氏が「オール沖縄」に支援された現職の再選を阻んだ。「オール沖縄」は今年に入り、2連敗となった。
 沖縄市、宮古島市の市長選で、玉城デニー知事を支える革新勢力は既に「オール沖縄」という呼称を前面に出していない。
 昨年の衆院選でも革新勢力は、選挙演説などで「オール沖縄」「辺野古」というワードを封印する傾向が見られた。
 「オール沖縄」が沖縄の選挙を席巻した時代はもう終わった。選挙戦で「オール沖縄」を掲げるメリットがほぼなくなっているからだ。革新勢力を「オール沖縄」と呼ぶこと自体、場違いになりつつあるのかも知れない。
 「オール沖縄」はもともと、保革を問わず米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する政治勢力の呼び名だった。
 産みの親である翁長雄志前知事が健在の時代は保革共同体としての機能を一定程度、果たしていたが、革新色が強まる中で保守側の人材が次々と離脱。革新勢力に先祖返りした。
 保革を問わず県民の支持を広げてきたはずの「オール沖縄」が衰退した理由は何か。辺野古移設工事の進展、辺野古を巡る裁判闘争での敗北で、辺野古移設阻止が現実的な政策とみなされなくなりつつあることが第一に挙げられる。
 加えて物価高などで県民を取り巻く経済環境が厳しさを増し、選挙戦でも基地問題より経済問題が重視されるようになった。
 玉城県政も辺野古を巡る最高裁判決の無視、県ワシントン事務所に関する不祥事、さらには北部豪雨災害の初動の不手際など失点続きだ。
 何より国と県の信頼関係が破綻した異常事態が10年以上続き、翁長・玉城県政下で、沖縄振興にも目立った進展が見られない。県民の評価が厳しさを増すのも当然だ。
 県内11市の市長選では、「オール沖縄」の全盛期も含め、もともと保守側が優勢だった。そして今月の宮古島市長選で「オール沖縄」の市長はついに姿を消した。
 現在、県内で保守を標榜(ひょうぼう)する有力政治家で、辺野古移設反対を明言する者はほぼ皆無だ。保革共同体としての「オール沖縄」は事実上存在しなくなった。
 沖縄市長選もそうだったが「オール沖縄対自公」の対立軸は、実際には旧来の「保守対革新」に収斂(しゅうれん)されている。
 今年予定されている大規模な選挙としては浦添市長選、うるま市長選、参院選があるが、対立軸に関しては恐らく同じ状況になるだろう。そして名実共に「オール沖縄」の存亡が問われる決戦が、来年の知事選ということになる。
 各種選挙で、辺野古移設の是非が最大争点とされた時代は過ぎた。「オール沖縄」は存在意義を失ったというべきだ。

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