昨年10月に国の重要無形文化財「八重山上布」保持者(人間国宝)に認定された新垣幸子氏(79)を祝う記念祝賀会(同実行委員会主催)が26日夜、市内のホテルで開催された。230人が来場し、新垣氏の功績を振り返り、認定を祝った。
八重山上布はイラクサ科の苧麻(ちょま)が原材料の織物。新垣氏が旧家に残る古文書を読み研究を重ね、伝統的な手結(てゆい)による「紺嶋上布(括染上布)」を復活させた。
新垣氏は高校卒業後の1972年に県工業試験場(現・県工芸振興センター)染織課で1年間技術を学び、故・大城志津子氏(県指定無形文化財・本場首里の織物、保持者)に師事。故・石垣英富氏(同・八重山上布、保持者)の工房でも技術を磨き、1973年に独立。
国は昨年7月19日に開催した文化審議会で、八重山上布を重要無形文化財に指定し、その発展に貢献した作家として、新垣氏の人間国宝認定を文部科学大臣に答申。同10月9日に告示され正式に認定された。
地元在住の八重山出身者が人間国宝に認定されたのは今回が初めて。
新垣氏は「私は一介の機織り職人として、生活の糧で仕事をしてきたが、今回の式典で多くの人に支えられてきたと実感できた。皆様の恩に報いるべく、後継者の育成に力を注ぎたい」と力を込めた。
実行委会長の中山義隆市長は「今回の指定で八重山に伝わる染色技法の芸術的価値と工芸市場の地位が国内で高く評価された。県民にとって最高の喜びであり誇り」と指摘。これまでの新垣氏の功績を振り返り「長年、染め織りの美を追求し研究を重ね、技術研さんを続けた結果だ」とたたえた。
来賓祝辞で玉城デニー知事に代わり登壇した半嶺満県教育長は「新垣氏は八重山上布の技法を高度に体得された作家として高く評価されている」と指摘。人材育成などへの協力も求めた。
このほか、石垣市文化協会の新城知子会長、「首里の織物」人間国宝・祝嶺恭子氏、元沖縄担当相・西銘恒三郎氏、沖縄美ら島財団の花城良廣前理事長が祝辞を述べた。染織研究家の與那嶺一子氏が新垣氏の功績を紹介した。
光扇会の関係者は、八重山舞踊を披露。新垣氏が織った八重山上布を活用した。