海外有識者「実現可能な目標を」 県が地域外交でシンポ

 「アジア・太平洋地域の緊張緩和と信頼醸成における地域外交の役割」をテーマにした沖縄県主催の地域外交シンポジウムが1日、那覇市のともかぜ振興会館で開かれた。県が進める「地域外交」に対し、海外出身の有識者4人が「野心的ではあるが、手の届く実現可能な目標を立てるべきだ」などと提言した。

 パネリストはインド出身で、アデレード大名誉教授のプルネンドラ・ジェイン氏、インドネシア出身で、平和民主主義研究所所長のクトゥト・プトラ・エラワン氏、中国出身で、早稲田大国際教養教授の舒旻(シュウ・ミン)氏、台湾出身で、シンクタンク・遠景基金会執行長の頼怡忠(ライ・イーチャン)氏(オンライン参加)。
 司会進行は早稲田大国際教養学部教授の上杉勇司氏が務めた。
 頼氏は地域外交が国家主権に関わることはできないとして、テーマを「地域と直接関わることに集中すべきだ」と指摘。具体的には災害対策などを挙げた。
 地域外交で留意すべき点としてジェイン氏は「どのようなメッセージを地域に発信したいか明確化し、戦略文書を作成することが重要だ。野心的過ぎて絵に描いた餅になってはいけない。3~5年で実現できることを掲げるべきだ」と強調。
 舒氏も「地域外交は野心的なチャレンジだと思うが、前に進めるためには実現可能な目標を立てるべきだ」と求めた。同時に「地域外交が国の外交と違うところは、柔軟にできるということ。沖縄が大国の境界線にあり、衝突の可能性がある境界線にあることが強みにもなる。緊張関係が高まった時に地域外交で特別な役割が果たせる」と期待した。
 エラワン氏は「沖縄は戦場から平和な場所になった歴史がある。アジアを太平洋とつなぐ場所でもある。国レベルでさまざまな溝があるが、架け橋となる可能性がある」と沖縄県のリーダーシップに期待した。
 沖縄が主導し、地域外交に関するフォーラムを毎年開催すること、フォーラム開催に向けたシンクタンクを設立することを求める声が出た。
 外務省の宮川学沖縄大使が「世界とアジアの中の沖縄と日本外交」をテーマに基調講演。日本は厳しさを増す米中関係のはざまにいるとして「大前提は絶対に戦争を起こしてはいけないということ。日米同盟を維持強化し、抑止力を高めていく」と外交方針を説明した。
 一方で中国とは「対話と交流を絶やさない」と友好の維持に努める考えを示し「外交は国益をかけた冷徹な交渉の一面があるが、交渉のテーブルに至る日ごろの交流のやり取りは大変重要だ」と述べた。
 玉城デニー知事は冒頭「アジア太平洋の平和構築と相互発展に貢献する地域外交に取り組む」とあいさつした。

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