台湾の李登輝元総統が2年ぶりに沖縄を訪れ、晩餐会などでスピーチした内容は、激烈ともいえる中国批判だった◆「中国の発展は覇権主義的。その結果、アジアにもたらされた動揺は、周辺国家の安全保障にとって大きな脅威となっている」「中国こそ、アジアの情勢を最も不安定にしている要因だ」―。東シナ海や南シナ海で傍若無人な振る舞いを続け、台湾、そして日本への圧迫を強める中国。その脅威は、90歳を超した李氏にとって次世代へ言い遺すべき、何より気がかりなテーマだったに違いない◆その言葉を裏づけるように、李氏が沖縄入りしたのと同じ22日、石垣市の尖閣諸島周辺海域に中国公船が入った。李氏が台湾へ発った25日には、4隻が領海侵犯した。尖閣周辺では地元の漁師が出漁できない状況が今も続く◆慰霊の日の23日には、戦没者追悼式に出席するため来沖した小野寺五典防衛相が自衛隊基地を視察。県内では「慰霊の日の自衛隊視察は県民感情を逆なでする」などと批判したメディアもあった◆しかし慰霊の日の前後に渡り堂々と尖閣周辺を徘徊(はいかい)していた中国公船のほうが、よっぽど県民感情を逆なでしている。メディアが沖縄を守る自衛隊に噛みつき、沖縄をうかがう中国に沈黙しているのはなぜか。