米軍普天間飛行場の移設作業が進む名護市辺野古の海域で、今年1月、県内メディアの記者を乗せたプレジャーボートが潜水中の漁業者に接近するトラブルを起こしていたことが分かった。記者は移設に反対する自然保護団体が実施中のサンゴ礁調査を取材中だったと見られる。事態を重く見た名護漁協の安里政利組合長は「今後、工事が進展すると反対運動が活発化し、漁業者が危険にさらされる可能性がある」と、反対運動絡みのトラブル続発を懸念している。
名護漁協によると、トラブルは1月21日に辺野古平島海域付近で発生した。漁業者が漁船の近くで約10㍍潜水し、魚や貝を採取していたところ、記者を乗せたプレジャーボートが漁船まで約15㍍の距離に接近。漁船から漁業者に酸素を送っているコンプレッサーのホースをプロペラに巻き込んだ。
漁業者は引きずられて海水をのんだが、ホースの結束部が外れたため脱出でき、けがはなかった。
プレジャーボートには操縦者の船長と記者が乗船し、汀間漁港から出港。辺野古の海域でリーフチェックを行っている自然保護団体の船を取材中だったと見られる。
漁業者は潜水作業中であることを示す国際信号旗(A旗)を漁船に掲げており、通常なら周辺を通る船は迂回する必要があった。トラブルを受け、中城海上保安部は船長を厳重注意した。
名護漁協は1月30日、汀間漁港を管理する名護市に対し、このプレジャーボートの占用許可を取り消すよう要請。市は、このプレジャーボートが占用許可を受けていない場所で無断停泊していた事実が発覚したとして、毎年4月1日付で行ってきた占用許可を更新しなかった。
現在、所有者である名護市議に対し、汀間漁港からプレジャーボートを撤去するよう求めている。
名護市議は取材に対し「船長から漁業者にはお詫びし、今後は気をつけるということで解決した」と説明。汀間漁港の占用許可取り消しに関しては「異議申し立てができると聞いているので、対応を検討している」と話した。
名護漁協によると、辺野古海域では移設反対派のカヌーが工事の作業船や警戒船としてチャーターされた漁船に接近し、船体をつかむなどの危険行為が昨年から数件報告されている。
安里組合長は、けが人が出ると漁業者の責任になる可能性があると懸念。「漁業者の安全を守るのが漁協の義務。抗議行動が過激になって事件事故が起こってはいけない。反対するのは個人の自由だが、迷惑行為はやめ、安全を守ってほしい」と求めた。