三重県出身の沖縄戦戦没者を慰霊するため、平和祈念公園(糸満市)に建立された「三重の塔」の改修計画を巡り、鳥居などの撤去に反対する署名活動を行っている浦添市出身の会社員、高里智佳さん(32)=東京都=が慰霊の日の23日、現地を訪れた。改修は11月の慰霊祭までに行われる見通し。高里さんは「鳥居などは、遠い南の島で亡くなられた方々に『せめて故郷を感じてほしい』という愛情の気持ちが可視化された施設。撤去を止められないのは悔しい」と涙を流した。
三重県によると改修計画は遺族会の要請を受けたもので、慰霊祭での十分な式典スペース確保と、参列者の高齢化に対応したバリアフリー化が目的。スロープを設置するため入り口の鳥居、敷地内にある築山、石橋を撤去して段差をなくす。入札業者が決まり、近く着工の予定という。
高里さんはウェブサイトと紙の双方で署名活動を始め、23日までに1932筆が集まった。
7月には三重県に署名を提出する予定だが、高里さんによると、三重県側は改修計画を予定通り進める方針で、鳥居や築山など撤去予定の施設についてはアーカイブ化(記録保存)する意向を示しているという。
この日、三重の塔を訪れた高里さんは慰霊碑に手を合わせ、感極まった表情を見せた。「もっと早く行動を起こせば、改修計画の見直しを実現できたかも知れない。撤去を止めるのは難しいかもしれないが、2千人もの人たちが同じ思いを持ってくださったのはうれしい。(署名提出という)行動が実績になればいい」と話した。