任期満了に伴う与那国町長選が24日投開票され、新人で前町議の上地常夫氏(61)が557票を獲得し、現職の糸数健一氏(72)ら2人を破って初当選した。糸数氏とは51票差。自衛隊与那国駐屯地拡大や日米合同訓練の受け入れに慎重な姿勢を示し、保革双方から幅広く支持を獲得した。与那国町は台湾に近い日本最西端の島で、町政の方針転換は、台湾有事をにらんだ政府の安全保障政策に影響を与える可能性がある。
選挙戦は上地氏、前町議の田里千代基氏(67)が糸数氏に挑む三つどもえの構図で、安全保障政策のほか、糸数町政の1期4年の評価や地域振興策が主要な争点。
上地氏は保革双方から支持を受け「住み続けたい!豊かな島を次世代へ」をキャッチフレーズに、6項目の重点政策を示した。
演説では、自衛隊との連携強化に注力する糸数氏は「自衛隊ファースト」、台湾との交流深化を訴える田里氏は「台湾ファースト」、自身は「町民ファースト」と位置付けた。3候補の中で住民が求める政策を最も実現できる候補として存在感をアピールした。
糸数氏は保革双方から支援を受けて前回町長選で初当選し、町政継続を訴えた。だが政府の安全保障政策に全面協力する姿勢が「右寄り」として革新層や穏健な保守層の離反を招いた。
田里氏は自身が町職員時代に関わった「与那国・自立ビジョン」の実現を訴え、革新層を支持基盤に選挙活動を展開。連日午前中から精力的に3集落を回り、政策を訴えたが、浸透しなかった。
陸上自衛隊与那国駐屯地の増強について上地氏は「機能強化はある程度の歯止めが必要」と明言。「住民の意見を十分に聞いた上で、防衛省に町の意見を伝える」と述べており、政府の安全保障政策への協力は町民の同意が前提とのスタンスを示す。
当日有権者は1342人(男774人、女568人)、投票者数1219人。投票率は90・83%で前回2021年町長選を0・2ポイント下回った。