【視点】自民新総裁、初の「女性首相」へ

 自民党総裁選で高市早苗前経済安全保障担当相が当選し、新総裁に選出された。自民党は少数与党だが、野党に一致して政権を樹立する動きがなく、臨時国会での首相指名選挙で、高市氏が首相に指名される可能性が高い。

 日本の長い歴史上、女性が政治のトップに立った例はほとんどない。特に近代以降は皆無と言っていい。もちろん憲政史上でも女性宰相は初となる。
 西欧諸国を見ると、英国では何人かの女性首相が誕生しているが、民主主義の本場のように言われる米国では、いまだ女性大統領は実現していない。日本が米国より先に「ガラスの天井」を打ち破ることになる。
 高市氏が首相に就任すれば、単に政治の世界だけでなく、女性の権利拡大が叫ばれ続けた日本社会にとっても、画期的な出来事になる。
 ただ、高市氏の総裁選勝利は必ずしも日本社会における男女共同参画や、多様性推進の結果としてもたらされたものではない。高市氏の特徴は、何より強い保守色にあるからだ。

 昨年発足した石破茂政権はリベラル色が濃く、安倍晋三元首相の保守的な路線や「アベノミクス」と呼ばれる経済政策との相性は良くなかった。
 その結果、昨年の衆院選、今年の参院選では、安倍元首相を強く支持していた自民党の「岩盤保守層」が石破政権を見限り、与党の大敗につながったとされる。

 衆参ともに過半数を失った自民党の危機感が、安倍氏の後継者と目される高市氏を総裁に押し上げた。今回の総裁選は石破政権からの揺り戻しであり、安倍路線復活の第一歩となると見られる。
 高市氏に投票した国会議員や党員が期待しているのは、先の衆院選や参院選で参政党や国民民主党に流出した「岩盤保守層」を、高市氏のもとで自民党に呼び戻すことだろう。高市氏が首相に就けば、必然的に安倍政権を彷彿(ほうふつ)とさせる政権運営になることが予想される。

 安全保障政策では米国と連携して対中包囲網を構築する方向に動くだろうし、選択的夫婦別姓やLGBTの権利拡大といった、社会を分断するような問題には慎重な姿勢を示すだろう。
 日本は周辺国である中露朝から軍事的な威圧を受け、経済的には衰退の途上にあって、内政・外交ともに危機に瀕している。史上初の「女性首相」という切り札に頼らざるを得ないほど、切迫した状況に追い詰められているということだ。

 今後、最初に注目されるのは人事である。高市氏には要職を安易に側近で固めるようなことはせず、広く有能な人材を活用し、文字通り挙党一致の体制を構築してほしい。その上で野党といかに連携し、政策を実現するかが問われる。連立の拡大も取り沙汰されているが、総裁就任早々から手腕を試されることになりそうだ。

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