日産自動車トップのカルロス・ゴーン容疑者が金融商品取引法違反の容疑で逮捕され、世界に衝撃を与えた。改めて国民を驚かせたのは、ゴーン容疑者が2011年から5年間で、同社から約100億円の高額報酬を受け取っていたことだ◆日本では経営者の高額報酬が賛否両論を呼ぶが、経営者の決断が数千億円の利益を稼ぎ出すのであれば、それだけの報酬に値すると言える。あまりに高額過ぎ、庶民感覚からはすんなり容認できないのも確かだが「ジャパニーズ・ドリーム」が可能な社会を目指すことには意義がある◆日本ではひところ「格差是正」という言葉が流行したが、多く稼いでいる人から高額の税を徴収し、低所得者層に分配するという単純な発想だったようだ。しかしそれでは双方の勤労意欲が削がれるだけで、あまり意味があるとは思えない◆尊重されるべきはチャンスが平等に与えられることであり、ルールに基づいた競争で成功者が巨額の報酬を獲得することは、若者を奮い立たせる◆しかし、スター経営者が私腹を肥やすため脱法行為に走り、摘発された事例は過去に何度もあった。成功者といえど最後に問われるのは品格だ。ゴーン容疑者の疑惑が事実とすれば「ジャパニーズ・ドリーム」に水を差す残念な事態である。