あまりに感情的なコメントにびっくりした。米軍普天間飛行場の辺野古移設工事で、沖縄防衛局が新護岸の工事に着手したことを受けた翁長雄志知事の反応である◆「政府は、なりふり構わず既成事実を作ろうと躍起になっているが、工事が進んでいるように見せかけているだけだ」。現場で抗議する反対派を鼓舞するリーダーのようで、これが行政の長とは、にわかに信じ難い。「あらゆる手法を適切な時期に行使し、これからも全力で戦う」。知事がこんな文書を発表すれば、海外なら「地方政府が中央に反旗を翻した」と大騒動になりかねない。折しもスペインでは自治州の独立問題が起きている◆ここまでの覚悟で阻止しなくてはならないという辺野古移設ではあるが、知事が誰のために、何のために戦わなくてはならないのか、いま一つ分からない◆移設が阻止されても沖縄を取り巻く脅威は去らず、沖縄の平和には何も寄与しない。あるいは、このコメントにあるように、大浦湾の環境保全が目的なのか。移設阻止の戦いとは、環境保護活動だったのか。移設阻止のメリットは、実は曖昧模糊(あいまいもこ)としている◆デメリットは明確だ。宜野湾市民の悲願である普天間返還が遅れる。「移設阻止」の光と影を、今こそ真剣に考える時だろう。