国の安全保障政策に対抗するため、県が国との法廷闘争に突入するという異常な事態が2代の県政にわたって続くことになった。米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で、県が国を提訴した◆移設反対派は「民意が踏みにじられれば、この国では民主主義が崩壊している証拠だ」と国を批判する。しかし他国は、むしろ地方が国の専権事項に介入するという日本の「お国柄」のほうに注目しているのではないか◆北方領土問題で日本政府と交渉中のロシア・プーチン大統領は辺野古を例に、米軍基地に対する日本の主権を疑問視。中国メディアは沖縄に記者を派遣、辺野古県民投票の結果を取材し「日本政府にとってプレッシャーになる」と報じた。辺野古を巡るゴタゴタが、日米安全保障体制への「付け入る隙」に見えているのは間違いないだろう◆提訴はいわば一線を超えた行為であり、玉城デニー県政が翁長雄志前県政と同様、政府との厳しい対立関係に陥るのは避けられない。時まさに、現行の沖縄振興計画が期限切れ直前のタイミング。経済界からは、政府と県の冷戦が沖縄振興に及ぼす悪影響を懸念する声も根強い。誰のために、何のための法廷闘争なのか。県の提訴が招き寄せるのは、県民にとっても国民にとっても、内憂外患だけだ。