中国国営テレビが、来年の台湾総統選で中国寄りの最大野党・国民党の有力候補の一人とされる高雄市長、韓国瑜(かん・こくゆ)氏を称賛する一方、民進党の蔡英文総統を酷評している。親中政権の成立に期待する中国が、メディアを駆使した人心操作に乗り出した形。台湾で政権交代が起これば、現在は友好ムードの日台間に一気に緊張が走る可能性も否定できず、尖閣諸島を抱える沖縄の安全保障を直撃する。中国による台湾政治への「介入」の行方は、沖縄にとっても目が離せない。
「大陸を訪問した韓氏は5日間で52億台湾元の契約を取り付け、メディアからも称賛されている。蔡英文は太平洋を訪問しながら、何も成果を上げていない」
中国国営テレビのニュース番組は韓氏と比較する形で、同時期に太平洋を訪問する蔡氏を槍玉に挙げた。「大陸訪問でお金を稼いでくる韓氏、太平洋でお金をばらまく蔡氏」「市民の苦しさを知らない指導者(蔡氏)と、市民のために声を上げる指導者(韓氏)」「蔡英文は恐怖を感じている」「韓氏に対する民進党の批判は、自らの無能の裏返し」と、蔡氏批判はとどまるところを知らない。
韓氏は22日から1週間、香港や中国本土を回り、中国側の手厚いもてなしを受けた。対中融和にひた走る韓氏を中国国営テレビのニュース番組は「韓氏は民進党が人為的に設置した壁を乗り越え、タブーを打ち破った」と手放しでたたえた。「民進党は独立のイデオロギーでしか勝負できない」とこき下ろし、台湾住民の間で、総統選へ向け韓氏への期待が高まっていることも伝えた。
韓氏は出馬の可否を明言していないが、世論調査で人気の高い韓氏が総統選に出馬し、蔡氏を破ることを中国側が望んでいるのは間違いなさそうだ。
国民党政権の馬英九総統時代、台湾の対日政策は厳しく、日本の尖閣諸島国有化に反発し、台湾の公船や漁船を領海に侵入させたこともあった。中国の影響力が総統選にどこまで及ぶか。関心が集まりそうだ。(仲新城誠)