防衛省が石垣島の陸上自衛隊配備に向けた駐屯地建設工事に着手して約1ヵ月が経過した。今後、陸自配備の是非を問う住民投票の可否と、残る駐屯地建設予定地となっている市有地を防衛省が取得できるかが焦点になる。3月には宮古島と鹿児島県・奄美大島で駐屯地が開設された。鹿児島県から日本最西端の与那国島まで千キロ以上に及ぶ南西諸島防衛強化の一環として配備計画が進む。奄美駐屯地で31日に開かれた記念式典で、原田憲治防衛副大臣は「陸自配備の空白状況の一部が解消される」と強調した。
中国は近年、沖縄本島と宮古島の間で軍用機を頻繁に行き来させ、空母「遼寧」も通過するなど活動範囲を広げている。石垣市の行政区域である尖閣諸島周辺では、領有権を主張する中国公船の領海侵入が常態化した。
沖縄を取り巻く厳しい国際情勢を受け、防衛省は沖縄本島だけだった陸自部隊の増強を進め、2016年に沿岸監視隊(約160人)を与那国島に配備した。今年3月26日には奄美大島の北部に奄美駐屯地、南部に瀬戸内分屯地を開設。警備部隊のほか地対空・地対艦ミサイル部隊を新しく編成し、計約550人の隊員を配置した。
奄美駐屯地司令の平田浩二1等陸佐は31日、記者会見で「奄美大島に陸自の部隊が配置されることで抑止力が強化される」と強調した。
防衛省は26日、宮古島にも約380人態勢の警備部隊を配置。20年以降にミサイル部隊も配備し、計700~800人規模まで増強する。さらに石垣島にも同様の部隊配備を決めており、500~600人態勢にする。
石垣市議会では、野党が提案した住民投票条例案を特別委員会で審議しており、遅くとも5月には結論が出る見込み。防衛省は先行取得した民有地で駐屯地建設工事に着手しているが、予定地の半分近くを占める市有地は未取得で、今後、市は防衛省への市有地売却を市議会に諮るものと見られる。ただ、提案時期は明確になっていない。
防衛省は尖閣諸島などでの有事を想定し、日本版海兵隊とも呼ばれる離島防衛の専門部隊「水陸機動団」を昨年3月に発足させた。約2400人態勢で備えるが、輸送手段の一つ、オスプレイの佐賀空港への配備ができていないなど課題は多い。
防衛省幹部は「後続部隊が到着するまでには時間がかかり、現場の部隊でしのぐ」と説明する。