石垣市の自治基本条例で住民投票の請求権が定められているにもかかわらず、実施できなかった理由を知りたいとして、石垣市住民投票を求める会の金城龍太郎代表らが3日、市役所を訪れ、中山義隆市長宛ての質問状を提出した。同条例は住民投票の実施に必要な手続きの規定を欠くため、市民は事実上、住民投票請求権を行使できないという「欠陥」が浮き彫りになっている。
金城代表は、石垣島平得大俣地区への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票条例の制定を直接請求したが、条例案は市議会で否決された。この日は質問状の提出後、「文書で回答してほしい」と求め、知念永一郎企画部長兼総務部長は「市の方針は議会で答弁した通りだが(質問状が提出されたことは)市長に伝える」と応じた。
自治基本条例では、有権者の4分の1以上の署名が提出された場合、市長は「所定の手続きを経て、住民投票を実施しなければならない」と定める。
金城代表は取材に「『住民投票を実施しなければならない』とあるのに、どうして住民投票ができなかったのか。市に具体的な手続きを聞き、今後の反省につなげたい」と述べ、同会の活動終了に当たり、改めて市の回答を総括の材料とする方針を示した。
地方自治法によると、有権者の50分の1以上の署名で住民投票条例の制定を直接請求できる。市の見解によると、自治基本条例による住民投票の請求は地方自治法の手続きよりハードルが高いが、住民投票請求権を具体化するための規定がないため、実際には地方自治法の手続きを「準用」して住民投票を請求するほかない。この場合、住民投票を実施するには議会での住民投票条例制定が必要になるため、議会で条例案が否決される事態も起こり得る。
住民投票を求める市民からは、議会で住民投票条例を制定しなくても、有権者の4分の1以上の署名が集まった段階で、自動的に住民投票が実施できるようにすべきとする意見がある。他の自治体では、そうした主張に沿い、個別の条例制定を不要とする「常設型住民投票条例」を制定している例もあるが、中山義隆市長は、「常設型住民投票条例」の制定を明確に否定している。
自治基本条例が住民投票の手続きの規定を欠いていることについて、市企画政策課は取材に対し「条例制定当時、こうした議論が起こることは予想されていなかった」との見方を示した。
市議会では、同条例を検証する特別委員会の設置が決まっており、今後、住民投票の規定も含めた条例見直しの議論が進みそうだ。