新元号「令和」の出典として注目を浴びる日本最古の歌集「万葉集」に、山上憶良(やまのうえのおくら)の有名な歌がある。「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに優れる宝子にしかめやも」。金銀財宝など何になろう。子どもに勝る宝はない、と訴える◆急速に少子化が進む現代日本で、古代人の叫びが、むしろ切実なリアリティをもって迫ってくる。厚生労働省によると、一人の女性が一生に産む子どもの数(合計特殊出生率)は2017年で1・43。このまま推移すると、日本の人口はいずれ半減することを意味する◆人口減少は、福祉、安全保障、経済など、国民生活のあらゆる場面に影響する。国の活力が失われれば、生活レベルが大きく低下することになり、国民は人口の多い米国や中国に全面的に依存して暮らすほかなくなる。名実ともに「属国化」ということになろう◆目の前で無邪気に遊ぶ子どもたち一人ひとりに、文字通り「日本の将来が託されている」と思うと胸が熱くなる。千年以上前の先人から言い伝えられていることなのだから、間違いなく真実なのである◆人口減少以外にも、子どもの貧困、学力不振、待機児童など、子どもを取り巻く問題は枚挙にいとまがない。「令和」時代の日本人に課せられた重い宿題だ。