【国境を撮る⑤】金日成に面会、批判も 北朝鮮報道の先駆けに

北朝鮮では金日成主席のこんなプライベートな表情の写真は珍しい。接見の合間に見せた真の表情=1980年(山本さん提供)

 〈北朝鮮への初訪問は1980年。拉致問題に関する初の国会答弁が88年3月26日。北朝鮮による日本人拉致問題が注目される前から、すでに現地の写真を撮っていた〉
 角さんの写真集を出したら、5万部ほど売れた。その印税を元手に次は何をやろうかって考えた。すごい写真家は周りにたくさんいたから、同じ土俵で戦っていても勝てない。だったら、誰もやっていないことを撮ろうと。いつも理由は単純なんだ。
 そこでふと浮かんだのが北朝鮮。80年代には北朝鮮の写真や情報が少なかったから、北朝鮮を撮ることに決めた。
 1980年の初訪問から数えて、結局11回訪問した。金正恩の祖父である金日成主席は日本人が写真を撮りに来ることを面白がっていたようで、接見もできた。何度も何度も北朝鮮を訪れるので、「北朝鮮シンパ、左翼カメラマン」と揶揄されるようになったわけだけど(笑)。
 北朝鮮による日本人拉致問題は、そのころにはまだ全然知られていなかった。
 小泉総理の時代になって拉致問題が知られるようになった。メディアは俄然、北への関心を深め報道合戦が始まったが、写真がない。だから今に続く北朝鮮報道のスタートラインに僕が立てたってことで、本当にラッキーだったね。

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